「憲法九条を世界遺産に」 太田光・中沢新一著
先日、安倍晋三の「美しい国へ」と共に、「憲法九条を世界遺産に」も同時に購入した。これも一気に読み終えた。爆笑問題の太田って、結構シニカルな芸風で俺は好きなのだが、この本でもディープな議論を展開させている。最近、現実論がまかり通って、九条を守れなどとは理想を追っている者を幼稚に見るな風潮があるなかで、多くの人に読んでもらいたい本だと思う。「美しい国へ」を読んだ直後だったからかもしれないけど、全体的に熱い内容に仕上がっている。これも今この時期の必読書の一つかも。
憲法九条は無論、戦争放棄を明示した憲法の一条文ではあるけど、これが世界に類を見ない珍品であり、せっかくそのような憲法を持ちえた我々があえて普通の国にならずに理想として九条を掲げたこの憲法を守っていこうよ、というのが大体の主旨だろうか。
なるほどな、と思った部分が「憲法九条は修道院のようなもの」という部分。つまり、普通の人が守れないような厳格な規律を守りつつ、人間の理想を考えている修道院。それは無駄なように見えるが、地上にそういうところがある、ということを人々に知らせることによって、人々の心が堕落しないで居られる、という。うまい例えだと思う。それを「無駄だ」といって切り捨てているのが今の改憲派であり、世論の風潮のような気がする。
もう一つ、印象に残った部分が、先般のイラク人質事件の際の自己責任論について。太田は「実際に香田君が殺されたときも、自己責任だったと、国もいうし、国民も行った。自分の国は自分で守りましょうと言っている人たちが、自分たちの国民を殺されて、文句一つ言えないなんて、何が国防なのかと思います。そんな人たちが軍隊を持っても、戦争なんてできないと僕は思うんですよ。」
よく言ってくれた。まさに同感である。当時の自己責任論こそ幼稚で未熟な世論であり、日常にストレスを感じている人々がたまたま槍玉を見つけ、こぞって(被害者の家族が助けてくれといえなくなるほど)誹謗中傷しただけなのではないか。
閑話休題。とにかくこの二人は今の日本が失いつつある希望、そして武力に訴える安易さ、に対する怖さを堂々と論じていると思う。我々は憲法九条を持っているということを誇りに思うべきである、ということを分からせてくれる一冊。安倍総理も読んでみたらどうだろうか。


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