2004年5月23日

パイロットの宇宙線被爆を防げるか

パイロットは上空で、地上にいる人に比べてかなりの量の宇宙線を被爆している。よく、鉛などで保護すればいいではないか、という意見を聞くが、実際にどのくらいの鉛が必要なのかは誰も論じない。それで、今回はどのくらいの厚さの鉛の服を着ると、地上と同じ放射線量まで落とせるのか、を計算してみた。

計算といっても、詳細なデータが手元にないため荒削りの計算となるが、一応の目安にはなると思う(何か数値や考え方の間違い等あったら、指摘していただきたい)。また、宇宙線といっても一次宇宙線(陽子、ヘリウム)から、電子(β線)や高エネルギー光子(γ線)などいろいろあるが、一次宇宙線はすぐに吸収されると思われるので、ベータ線とガンマ線の影響について調べた。

クーロン散乱および電子対生成を考慮すると、どちらの強度もe(-x/X0)に比例するので、一括して計算する。

X0…Radiation Length(g/cm2)。強度が1/eになるまでの1cm2あたりの重さ。物質により異なる。
x…物質の1cm2あたりの重さ

FL390での飛行を仮定する。地上気圧を1kg/cm2(1000hPa)とし、FL390の気圧を0.2kg/cm2(200hPa)とすると、気柱の重さは800g/cm2となる。

X0(Air)=36.66g/cm2
X0(Pb)=6.37g/cm2

であるので、800g/cm2の空気と同じだけ強度を落とすことができる鉛の厚さをx(g/cm2)とすると、比例関係に注目して次式が成り立つ。

e(-800/36.66)=e(-x/6.37)

したがって、

x=800*6.37/36.66=139g/cm2

となる。鉛の密度は11.35g/cm3であるので、上記のxをこれで割ると、必要な鉛の厚さは、

139/11.35=12.25cm

となる。つまり「FL390を飛んでいて地上と同じだけの宇宙線被爆量にするには、厚さ12.25cmの鉛の服を着ないといけない」ということだ。空気のX0が平均海面での値であったりうするが、だいたいこのくらいの値になると思う。

このような防護服を作ること自体非現実的だし、せめて鉛の天井にするにしてもかなりの重量となって、これも非現実的だ。ちなみに、FL300で計算しても、約10cmの厚さの鉛が必要ということになる。かといって低い高度を飛べば燃料効率が著しく低下し、地球環境にもよくない。

また、仮に1cmの厚さの鉛を着たとしたら、約65g/cm2分高度が下がることになり、約65hPa分は高度を下げたのと同じ効果が得られると考えられる。

あくまでも、今回は手元にあるデータのみで計算した結果なので、参考値でしかない。でも、結論としては、鉛の服を着ていてもそれほど効果は見込めないし、見込むほど鉛を積むのは非現実的だということだ。早くパイロットの宇宙線被爆量管理を実現して欲しいところ。

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